赤ちゃんの頭の形外来

赤ちゃんの頭がゆがむ原因は、大きく分けて2つあります。
ひとつは、「向きぐせ」によるもの(位置的頭蓋変形)で、頭位性斜頭や絶壁頭、縦長頭があります。
もうひとつは、頭蓋骨縫合早期癒合症などの病気によってゆがんでしまう「病的頭蓋変形」です。

「病的頭蓋変形」の場合、お子さんの脳の発達に悪影響を及ぼすことがあり、程度によっては手術などの治療が必要で、見逃すわけにはいきません。そのため、赤ちゃんの頭のゆがみが気になる場合、まずはそのゆがみが、病気によるものか、それとも病気でないのかを判断するため、適切な診察を受けることがとても重要です。
一方で、向きぐせなどによる「頭位性斜頭」であれば、脳の発達には影響なく、基本的には治療は必要ありません。

変形が軽度であれば、赤ちゃんが成長して自分で寝返りするようになったり、頭が大きくなってゆく中で自然に目立ちにくくなっていくことが期待できます。生後2か月頃までの骨が柔らかい間は、頭の位置や枕などを調整・工夫したり、タミータイムと呼ばれる見守り下でのうつ伏せの時間を増やしたりすることで多少の改善が見込めます。

しかし、ゆがみがきわめて高度の場合には、学童期や大人になってもゆがみが残ってしまい、見た目が気になったり、眼鏡がフィットしにくい等の問題が生じる可能性もあります。その場合は、生後4~6か月前後までの時期に開始する、ヘルメットを使った矯正治療が有効であることがわかっています。病気ではなく、見た目についての治療ですので、健康保険は使えず全額自費(当院では55万円:税込)の自由診療となりますが、お子さんの頭の形を3Dスキャンし、オーダーメイドのヘルメットを作成して頭の形を整える治療が当院で実施可能です。

当院はこれまで、ヘルメット治療を希望される方には院外の他施設を紹介していましたが、2025年4月より、ヘルメットの作成と月1回の定期診察を当院院内で実施することが可能となりました。

つきましては、お子さんの頭の形についてお悩みの場合は、「病的頭蓋変形」の除外が必要な場合もありますので、お気軽に「頭の形」外来を受診頂ければと思います。
なお、ヘルメットを希望される場合、適齢受診時期は生後4~6か月前後ですので、お早めにご相談ください。

赤ちゃんの頭のゆがみについて

赤ちゃんの頭蓋骨は成人と異なり、いくつかのパーツに分かれていて、それぞれの骨は非常に薄く、やわらかいです(生後すぐにはわずか数ミリの厚さしかなく、我々の手の指の爪くらいのイメージです)。成長するにつれ、隣同士の骨は徐々に一体化し、硬くて分厚い大人の頭蓋骨(成人の頭蓋骨の厚さは1~2センチ)へと近づいていきます。
そのため、頭蓋骨がやわらかい生後数か月の間は、「向きぐせ」によるゆがみ(位置的頭蓋変形)が生じやすい状態です。
赤ちゃんの頭の形がゆがんでいることを気にして受診される方のうち、大多数はこの位置的頭蓋変形であり、その場合、脳の発達や成長には影響はありません。
しかし、稀ではありますが、「骨の病気」など、何らかの疾患によって頭の形がゆがんでしまうことがあります。隣同士の骨が異常に早く一体化してしまう病気(頭蓋骨縫合早期癒合症)がその代表で、この場合、頭蓋骨が大きく成長できず、脳の発達に悪影響を及ぼすことがあり、場合によっては早期の手術が必要となることもあります。
このように、頭の形がゆがんでいる場合、それが病気によるものか、それとも病気でないものか、適切な医師の診断を受けることがとても重要です。

位置的頭蓋変形について

生まれて間もないころに同じ方向を向いて寝ること(向きぐせ)や、妊娠中のさまざまな要因(多胎妊娠など)により、頭の形にゆがみが生じる状態です。この状態は病気ではなく、脳機能の発達に影響が出ることは基本的にありません。位置的頭蓋変形のゆがみは形に応じて「斜頭」「短頭」「長頭」の3つのタイプに分けられます。また、「斜頭」+「短頭」のように、2つのタイプが合わさることもあります。いずれのタイプのゆがみも、頭の骨の病気(頭蓋縫合早期癒合症)でみられる変形とよく似たゆがみを呈することがあるため、注意が必要です。

斜頭

斜頭(しゃとう)は、後頭部が斜めにゆがんでしまい、左右非対称になっている状態です。主な原因は、向きぐせや胎児期の子宮内環境による後頭部への圧力とされています。ゆがみが進行すると耳の位置や顔面(おでこや頬)まで左右非対称になってしまうこともあり、そのような場合には、大人になってもゆがみの名残が残ってしまう場合があります。
斜頭

短頭(絶壁)

短頭(たんとう)は、後頭部が丸くならず平坦になってしまう状態です。一般的に絶壁とも呼ばれます。主な原因は、赤ちゃんが仰向けに寝ることで後頭部に圧力がかかることによるとされています。
短頭(絶壁)

長頭

長頭(ちょうとう)は、頭部が通常より縦に長く伸び、後頭部が著しく突き出ている状態です。主な原因は、横向きに寝ることによって側頭部に圧力がかかることとされています。
長頭

頭のゆがみの予防方法

赤ちゃんの頭のゆがみ度合いを大きくしないために、家庭でできる予防方法があります。

寝かせる向きの工夫

できるだけ同じ方向を向かせないように配慮することで、片方の後頭部に圧力が長時間集中しないようにします。
例えば
・授乳のたびに頭と足の位置を交互に入れ替えて寝かせる(人など、興味のある方へ向きがちなため)。
・両親が話しかける方向や、ベッドの向きを変える。

まずは、寝ている赤ちゃんの顔の向きを観察してみましょう。

タミータイム

タミータイムは首座りの練習やうつ伏せ練習の方法として用いられますが、頭のゆがみを予防する方法としても有効です。うつ伏せになることで頭にかかる圧力を防げます。
分娩施設から自宅に戻ったら、1 日2.3回、3~5分くらいからはじめてください。
保護者の監視下で、おむつ替えの直後や、目が覚めた後に行いましょう。
※ 顔を動かすことのできない時期のうつ伏せ寝は窒息の恐れがありますので注意が必要です。うつ伏せのまま寝てしまわないように注意してください。寝かせる際は仰向けにしましょう。

ヘルメット矯正治療

しかし、これらの家庭でできる工夫で頭のゆがみの改善を期待できるのは、頭蓋骨の柔らかい生後2~3か月頃までです。生後4か月以降になっても重度のゆがみが残っている場合には、大人になってもゆがみが残ってしまう可能性が高く、このような場合、頭蓋矯正ヘルメットによる治療が有効であることがわかっています。

ヘルメット矯正治療の要点

  • 3Dスキャンで赤ちゃんの頭の形を立体的にスキャンし、一人ひとりにぴったりの頭蓋形態誘導ヘルメットを作成します。
  • 頭蓋骨の出っ張っている部分がそれ以上突出しないように制限をかけ、同時に、現在へこんでいる部分が膨らむのを促すようなヘルメットの形を、一人ひとりの頭の形にあわせてデザインします。(頭蓋骨に負荷をかけて押し戻すのではありません。)このような治療の仕組みであることから、治療は頭蓋骨が柔軟な時期に限られます。
  • 治療開始時期は生後3~7か月で、そこからおよそ6か月間、一日中(入浴以外の1日23時間)ヘルメットを装着します。
  • 変形の改善効果はヘルメット装着開始が早いほど高く、生後8か月以降だとかなり低下します。
  • ヘルメット治療では「治療開始後のサポート」が重要です。赤ちゃん一人ひとりの成長や治療の進み具合を見極め、適切なメンテナンスを行うために、月に1回のペースで外来受診をして頂きます。医師とメーカーの協同が不可欠です。
  • メーカーの豊富なノウハウやデータにより、正確な診療が実現されます。医師とメーカーが協力しながら矯正治療を行っています。
ヘルメット治療

頭蓋矯正ヘルメット

当センターではジャパン・メディカル・カンパニー社の日本製ヘルメットを用いて治療します。
最先端3Dプリンタによる、強度と軽さを両立したヘルメットは、赤ちゃん一人ひとりに合わせた完全オーダーメイドで、日本人の骨格や、高温多湿な日本の気候を踏まえて設計されています。
17,000症例以上の経験を有するジャパン・メディカル・カンパニーのスタッフが常駐し、安心安全な医療サービスの提供をしています。

Qurum Fit(クルムフィット)

強度がありながらも非常に軽く、首が座っていない低月齢のお子様から装着できます。
ヘルメット本体はもちろん、クッションの水洗いも可能で、清潔な状態が保てます。 赤ちゃんの頭蓋矯正ヘルメット

ヘルメット矯正治療の費用について

病的変形かどうかの診断までは保険診療で行います。
病気ではない頭のゆがみ(頭位性頭蓋変形)に対するヘルメット矯正治療は、審美目的(美容目的)の自費診療になります。※当センターのヘルメットは医療費控除の対象となります。
自費診療にかかる費用は、ヘルメット作製費と、以降の外来診療費を合わせ、550,000円(税込・2025年1月現在)です。

ヘルメット治療の流れ

Step1 レントゲン検査

病的な頭蓋変形(頭蓋骨縫合早期癒合症)でないか確認します。
(単純レントゲン検査で受ける放射線の量はごくわずかで、検査による発達への影響はありません。)

Step2 適応診断

診察では、視診・触診を通して、変形の診断と重症度(レベル1~4)を判定し、診察時の月齢を考慮した上でヘルメット矯正治療の適応を判断します。

Step3 3Dスキャンによる頭部の撮影

3D画像撮影解析装置(VECTRA H2)を用いて、お子さまの頭部を上部・前後左右から2~3回ずつ撮影します。
矯正治療の適応があり、希望された場合には、以降は自費診療での矯正治療を行います。

Step4 ヘルメット作成

3Dスキャナー撮影データをもとに、現在の変形した形から、矯正後の最終的な頭の形を想定したオーダーメイドのヘルメットを作成します。

Step5 治療スタート

治療申し込みから約2週間でヘルメットが届き、装着開始します。基本的には入浴以外の1日23時間、6か月前後の装着を推奨しています(個人によって期間が異なります)。

Step6 定期的な診察

約1か月ごとに診察します。ヘルメットの装着状況や矯正状況、頭の成長状態を確認し、ヘルメットの再調整を行います。治療終了時に3Dスキャン検査を行います。

Step7 治療終了

治療の終了は、頭蓋変形の改善度、頭蓋成長の度合い、装着時間の状況などを基に判断します。

ヘルメット治療による効果(実例のスキャンデータ)

月齢が早く、装着時間が長いほど改善効果が期待できます。
※ 開始した月齢や、装着時間、成長の速度によって個人差があります。
ヘルメット治療効果例
ヘルメット治療について相談したい方は、当院が導入しているヘルメット「Qurum Fit」のメーカーが運営する「赤ちゃんの頭のかたち相談室」に無料でご相談いただけます。

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