当センターは、周産期医療の専門的な基幹施設として、地域の医療機関では対応が困難な妊産婦や低出生体重児・新生児に対して高度・専門医療を行うため、1981年に診療を開始しました。1991年には、小児医療部門(こども病院)を開設し、小児の高度・先進的な医療を提供してきました。
最近は、ローリスクな分娩も積極的に受け入れています。また、幅広い小児の内科・外科的疾患患者も積極的に受け入れています。小児救急医療では、2018年11月より小児救命救急センターとして3次救急を担当し、2020年12月には大阪府の「二次救急告示医療機関」に認定されました。2022年4月からは泉州の小児救急輪番病院にも加わりました。
小児部門開始と同じ1991年には研究所を開設し、病院と一体となって周産期・小児分野の希少・難治性疾患のゲノム解析・病態解明や診断・治療法の開発に取り組むとともに、学術的にも大きな成果を挙げています。
母子保健事業は開設以来の当センターの根幹です。「にんしんSOS」「妊産婦こころの相談センター」「移行期医療支援体制整備事業」など多くの事業を府から受託しています。今後、大阪府の母子保健で指導的な役割を果たしていきたいと考えています。
小児科研修では専攻医の基幹施設となるとともに、多くの診療科が大学病院などの研修連携施設となっています。産科シニアフェロー制度を設置し、専門医の育成を行っています。また、次世代リーダーの人材育成を行う環境整備を行い、継続して高度な医療が提供できる体制を整備します。
看護部門やコメディカル部門でも多くの研修生・実習生を受け入れ人材育成に大きく貢献しています。
研究所でも当センター医師や大阪大学医学部などの大学院生を積極的に受け入れ、研究者を育成しています。
2022年6月に当センターホームページを全面的にリニューアルしました。閲覧する方によって入口を分けることで患者さんがご希望の情報にアクセスしやすくすることやスマートフォンで見やすくすることなどをポイントとして改善しました。
2022年7月に、当センターは府内で8施設の小児中核病院の一つに指定されました。1999年には大阪府で最初の総合周産期母子医療センターに指定され、2018年には小児救命救急センターに指定されていますので、今回の小児中核病院の指定によって当センターは、周産期・小児のすべての分野において大阪府の中核的な施設として認定されたこととなります。
2022年度も当センターの最重要課題は、病院の建て替えに向けて前進することでした。建て替え計画について府立病院機構本部や大阪府と協議しながら、基本計画を着実に進めました。また、それと平行して現有のすべての医療機器の正確なリストを作成しました。2023年度からはいよいよ基本設計段階に入ることとなります。
2022年度も昨年・一昨年に続いて、新型コロナに翻弄された一年でした。2022年初の第6波と7-9月の第7波では感染者の若年化傾向が一段と進み、小児の感染者数は全体の30%にもおよびました。われわれも多くの小児と妊婦の感染者を受け入れましたが、当センターに入院した小児患者の約1%は重症で、その中で数名の患者さんには残念ながら後遺症が残ることが危惧されています。2021年に続いて、2つの外科病棟の1つをコロナ患者専用として入院を制限せざるを得ず、患者さんとご家族に多大なご迷惑をおかけしました。コロナ禍の中でも、私たちは府の周産期と小児の拠点病院としての役割を確実に遂行することが重要と考え職員一同業務に当たってきました。
当センターは、高度専門医療・研究をさらに推進し、未来を担うこどもたちが病気に打ち勝ち、健やかな成長を遂げて、こども達とご家族が「勇気、夢そして笑顔」を持てるよう、患者さんを中心とした医療を提供します。
また、若い医師・看護師・コメディカルなどの皆様が当センターで勤務したい、研修したいと憧れて頂けるよう診療、研究、人材育成など、すべての面で日本の周産期、小児医療をリードする病院を目指します。
(2023年4月)
地方独立行政法人大阪府立病院機構
大阪母子医療センター
総長 倉智 博久