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病因病態部門

部長からのごあいさつ

 部長の写真

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生まれてくる赤ちゃんの5%程度は、心臓がうまく働かない心疾患や脳と脊髄になる管がうまく閉じないことによって生じる二分脊椎など、からだのどこかの器官(臓器)に生まれつき(先天性)の形態的異常を持っています。実際、乳児の死亡理由で一番多いのは、この先天性疾患です。先天性疾患の発症原因には、親から受け継がれたり、あるいは患者さん自身の突然変異による遺伝的要因や母体内の環境要因(栄養状態など)が関わるとされています。しかし、病名さえつけられていない先天性疾患も多く、どうすれば発症を防げるのかよくわかっていません。

また、妊娠の最も初期である、受精卵が子宮に着床する時期では、受精卵と接する子宮内膜が成熟していないと、着床・その後の赤ちゃんの発生が難しくなり、着床障害や早期流産になると考えられています。しかしながら、子宮への着床機構は完全には解明されておらず、赤ちゃん誕生の謎と考えられています。実際、ヒトの受精卵を子宮にうつしても着床が成功する率は依然低く、着床成功率の向上が期待されています。

病因病態部門では、イエネズミ(マウス)を用いて受精卵から誕生までのメカニズムを解明することを目標に研究を行っています。なぜマウスかというと、子宮への着床、仔マウスの発生、成長の様式が、ヒトと大変よく似ていること、また100年以上にもわたってヒトの病気を研究する最も適した実験動物とされてきているなどの理由があげられます。具体的な研究方法は、マウスの持っている遺伝子情報を人工的に操作することによって、ヒトの先天性疾患を発症するモデルマウスを開発し、病気の発症メカニズムの解明を試みています。また、受精卵が赤ちゃんへと正常に育っていくために必要な子宮側の環境要因を明らかにする研究も進めています。

このような地道な研究を日々続けることによって、妊娠を望んでいるお母さん、生まれてくる赤ちゃんがかかる着床障害や先天性疾患などをより早期に発見する手法を探しだし、新しい治療方法の開発へとつなげたいと考えています。

病因病態部門 部長 松尾 勲