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膀胱尿管逆流症

腎臓で作られた尿は腎盂、尿管を通り一旦膀胱にたまった後、排尿時に尿道を通って排泄されます。正常ではこの通り道は一方通行で、膀胱にたまった尿が尿管や腎盂に逆流することはありません。しかし、尿管と膀胱の接合部の筋肉が弱い場合には、逆流を止める力が弱くなり、膀胱尿管逆流症となります。また、尿道に狭い部分があるような場合にも、排尿時に負担がかかり膀胱尿管逆流が生じることもあります。

膀胱尿管逆流があると、膀胱内に入り込んだ細菌が逆流した尿に乗って腎盂まで上がることにより腎盂腎炎となり、高熱が出たり、時には敗血症になることもあります。また、腎盂腎炎を繰り返すことにより、腎臓に傷(腎瘢痕)ができ、腎機能低下の原因にもなります。膀胱尿管逆流の治療の最大の目的はこの腎盂腎炎を起こさなくすることにあります。

膀胱尿管逆流症の自然経過を調べると、自然消失することもあることがわかっています。
この自然消失率は逆流の程度、年齢、性別などによって変わります。消失の可能性が高い場合にはすぐには手術を行わず、経過観察します。
この間、腎盂腎炎を予防するために抗生物質を飲み続けてもらうこともあります。しかし、自然消失の見込みが少ない場合や、抗生物質では腎盂腎炎を押さえられない場合などには、当科では手術を推奨しています。

1. 手術の方法

  1. 当科が推奨する術式
    尿管膀胱新吻合術(逆流防止術)は全身麻酔下で行います。
    下腹部を数cm横に切開して膀胱を開いた上で、膀胱の内側から尿管をくり抜き、膀胱の内側の「粘膜」という薄い膜の下に「トンネル」を作り、尿管を通すことで逆流防止を図ります。
    この方法は、膀胱尿管逆流症の手術の中では最もスタンダードなもので、当科では年間約70例、過去20年間に1000名余りのお子さまにこの方法を施行していますが、成功率は99%以上です。術後は約4日間膀胱に管(カテーテル)を入れます。入院期間は平均1週間です。
  2. その他の手術法
    内視鏡を使って尿管口に薬剤(デフラックス®︎)を注入する方法があります。成功率は開腹手術と比べて低い(7割弱)ですが、入院時期が短く、おなかに傷を残しません。ご家族と相談のうえ施行しています。腹腔鏡を用いた手術も始まっています。将来は器機の進歩などで普及する可能性はありますが、手技的な困難さもあり、一般的ではありません。

2. 手術の危険性、合併症について、及びその対応

まれに尿管と膀胱をつなぎ合わせたところが狭くなることがあります。
多くの場合は一過性のむくみによるもので特に治療は不要ですが、通過障害が改善しない場合には、腎臓にカテーテルを入れたり、再手術でつなぎなおすことがあります。
また、逆流の再発や、片側だけの手術の場合反対側に逆流が新しく出現することもあります。軽度の逆流であれば自然に消失し多くの場合治療は不要ですが、腎盂腎炎をおこすような場合は抗生剤内服や再手術が必要になることがあります。
その他、出血、創部感染などの一般的な危険性もありますが、重篤なものは極めてまれで、輸血を要することはほとんどありません。