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診療科・部門のご案内

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遺伝診療科

診療科の概要

当センターにはダウン症候群、ターナー症候群、22q11.2欠失症候群などの染色体異常症やヌーナン症候群や歌舞伎症候群などの先天異常症候群、遺伝性疾患、各種先天疾患をお持ちの患者様が多く受診しています。こうした患者様の総合的な診断、疾患の特徴を踏まえた健康管理、成長発達の評価などを行います。正確な診断のために、各種の遺伝学的検査を実施しています。必要に応じて他の診療科と連携して合併症の早期の把握や対応を進めます。療育機関への紹介も行います。また、遺伝に関する疑問や不安を解決するために遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングを実施します。診断後は定期的なフォローを行います。

最近は多くの大学病院や国公立のセンター病院では遺伝カウンセリング・遺伝診療を行う専門の部門ができています。当センターにおいて遺伝診療科は新しい情報を的確に診療に生かすことを考えた診療を目指しています。

診療だけでなく、遺伝性疾患の研究も行っています。診断不明の遺伝性疾患の原因の解明や、治療方法の可能性を探ることも行います。全国の専門病院や大学病院との共同研究を行っています。最近では横浜市立大学や他の小児病院との共同研究で、コフィン・シリス症候群の原因が「クロマチンリモデリング」の異常であることを解明することができました。知的障害の研究に大きな影響を与えました。また、東北大学遺伝病学分野との共同研究で、ヌーナン症候群やCFC症候群をはじめとする「RAS-MAPK系」の新しい疾患を見いだしています。東京医科歯科大学分子細胞遺伝学教室との共同研究で、CASK遺伝子による小頭症の疾患概念を確立することができました。国際的な共同研究で、先天性水頭症の原因になる神経接着因子の異常がヒルシュスプルング病を併発することを見いだしました。「武内―小崎症候群」は慶應義塾大学との共同研究の結果、2019年から新たに小児慢性特定疾患に指定されました。この他にも新規に見いだされた知見や新規症候群がたくさんあります。

遺伝医療の専門スタッフの育成のための、研修も行っています。平成18年度から、近畿大学大学院総合理工学部研究科認定遺伝カウンセラー養成課程の実習機関となっており、当センターで実習を受けた遺伝カウンセラーが各地で勤務しています。令和元年より、臨床遺伝専門医指定研修施設に認定されました。

日本において、遺伝医療はまだ十分浸透していません。遺伝に対する誤解や偏見もみられます。そのような状況を改善するために講演会やセミナーを開催しています。平成22年にはダウン症候群を持つお子様のご家族を対象にした「すくすく外来」を開始し、約300名以上の卒業生がでています(すくすく外来は終了しました)。
ダウン症候群をお持ちの患者様約1000名ほどを長期的にフォローしています。

同じ疾患を持つお子様の家族同士が知り合うことが疾患の理解に有用な場合があります。遺伝性疾患や染色体異常症の親の会やサポートグループの活動の支援も行います。

遺伝診療科 診療科のご案内

主な対象疾患

ダウン症候群、ターナー症候群、クラインフェルター症候群、4p-症候群、5p-症候群、22q11.2欠失症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリ症候群、アンジェルマン症候群、ソトス症候群、1p36欠失症候群、13q-症候群などの染色体異常症。マイクロアレイ染色体検査では通常の染色体検査で同定できないような微細な染色体異常も同定可能です。
ヌーナン症候群、CFC症候群、コステロ症候群、マルファン症候群、コルネリア・デランゲ症候群、ベックウィズ症候群、レット症候群、アンジェルマン症候群、ピット・ホプキンス症候群、コフィン・シリス症候群、モワット・ウィルソン症候群、ルビンシュタイン・テイビ症候群、CHARGE症候群、CASK遺伝子異常による小頭症などの先天性症候群(染色体異常による場合もあります)。各種先天代謝異常症、結合組織異常症、骨系統疾患、先天性難聴その他の遺伝子変異による疾患が診療の対象となります。

遺伝カウンセリングについて、詳細はこちらのページをご覧ください。

分野別にみた疾患分類

遺伝診療科は、多数の診療科との連携が多いことが特徴です。

産科・新生児科

先天性疾患・遺伝性疾患を持って出生した新生児に対する診断、退院後の成長発達のフォローアップを行います。2019年度から「新生児集中治療室における精緻・迅速な遺伝子診断に関する研究」が始まり、重症新生児を対象とした緊急診断と救命的治療での遺伝子解析研究が始まりました。
ダウン症候群は近隣の産科からの初診を毎年多く受けています。早期に遺伝カウンセリングを実施し、合併症の精査など包括的支援を行います。
小児だけでなく、親自身が遺伝性疾患をお持ちである方、過去に染色体異常症や遺伝性疾患のお子様の出産既往がある方など、成人の方も遺伝カウンセリングも行っています。

小児内科系

遺伝性の小児内科系疾患の診断、治療を各科と共同して実施しています。
プラダー・ウィリ症候群やターナー症候群、ヌーナン症候群など、内分泌治療を必要とする疾患を共同でフォローします。ヌーナン症候群では一定に基準を満たした場合に成長ホルモン治療が可能になります。ベックウィズ症候群など、腫瘍を併発しやすい疾患もあり、プロトコールに従ったフォローを行います。神経線維種症や結節性硬化症のような神経皮膚疾患の診療も行っています。
アンジェルマン症候群、レット症候群、各種神経筋疾患、神経変性疾患などの遺伝学的原因検索や遺伝カウンセリングを行っています。
脊髄性筋萎縮症や進行性筋ジストロフィー、筋強直性ジストロフィーなどの筋疾患の遺伝学検査、遺伝カウンセリングも実施しています。脊髄性筋萎縮症は早期治療が有効であり、拡大マススクリーニングによる早期の診断が重要です。
ドラベ症候群などてんかんの一部は遺伝子異常によりますが、そのようなてんかんの遺伝子診断を行っています。抗てんかん薬の選択に有用な場合があります。小頭症や巨頭症についてもかなり遺伝子レベルで原因がわかるようになっています。自閉症も神経のネットワークに関連遺伝子異常などが解明されてきており、研究成果を視野に入れた原因検索を行っています。
免疫不全症や遺伝性血液疾患も遺伝子診断が可能になっています。家族性腫瘍、遺伝性腫瘍に対する遺伝カウンセリングも行います。
一部の先天性代謝異常症(ムコ多糖症やファブリー病)に対しては診断のための検査や酵素補充療法を行っています。

小児外科系

ダウン症候群をはじめとする染色体異常症では消化管閉鎖やヒルシュスプルング病、鎖肛など小児外科的合併症を合併する場合があります。
こうした小児の基礎疾患の診断、術後の成長発達面のフォローアップを行います。CHARGE症候群やVATER連合症候群についても成長発達の評価を行っています。

小児循環器・心臓血管外科

ダウン症候群、22q11.2欠失症候群、ウィリアムズ症候群、ヌーナン症候群、ターナー症候群、マルファン症候群やその他の先天性症候群では心疾患の合併が多くみられます。
こうした小児の基礎疾患の診断、成長発達のフォローアップを行います。

脳神経外科

遺伝性水頭症、頭蓋縫合早期癒合症、中枢神経先天異常など遺伝性疾患の診断を行います。研究所と共同で脊髄髄膜瘤の遺伝子レベルでの原因研究も行っています。

眼科

眼科領域の遺伝性疾患、ノリエ病などの眼先天異常、レーベル病、網膜芽細胞腫の遺伝カウンセリングをします。網膜芽細胞腫についてはRB遺伝子検査は保険収載されています。無眼球症も遺伝子レベルで原因がわかる場合が多いです。

耳鼻咽喉科

耳鼻咽喉科の遺伝性疾患、先天異常、先天性難聴などが対象です。染色体異常や先天異常症候群で難聴や滲出性中耳炎などの合併症が予想される場合は耳鼻咽喉科に紹介します。先天性難聴や若年性進行性難聴の遺伝子診断や遺伝カウンセリングも行っています。難聴に関しては保険診療の遺伝子検査で陰性の場合、共同研究機関における研究的解析も実施しています。

整形外科

軟骨無形成症や骨形成不全をはじめとする各種骨系統疾患や多発性関節拘縮症など先天性の骨・関節異常の疾患の診断、全身合併症の検索を行います。先天異常症候群では側彎、頚椎異常などの骨関節異常を合併する場合があるので、注意が必要です。

口腔外科

口唇口蓋裂、巨舌症、小顎症などの口腔外科疾患について、遺伝学的検査を行います。口腔外科疾患と全身合併症を有する小児の基礎疾患の診断、フォローアップをします。
一部の先天性の疾患では歯科矯正治療に保険適応があります。保険適応のある疾患かどうかの判断を行います。

泌尿器科

泌尿器系先天異常、性分化異常などが対象です。先天異常症候群のなかには水腎症や膀胱尿管逆流症などの泌尿器系の異常を合併しやすい疾患も存在します。

形成外科

各種先天奇形、母斑症など、形成外科治療が必要な場合、紹介します。

各科で実施される遺伝学的検査に伴う遺伝カウンセリングを実施します。

遺伝カウンセリング

主な検査と治療

遺伝学的検査には染色体検査や遺伝子検査が含まれます。近年のゲノム科学、分子遺伝学の進歩は著しく、多くの小児疾患の病因が分子レベルで解明されました。実際に診療の現場で遺伝子診断が利用される機会も増加しました。ゲノム科学や遺伝医学を臨床の現場に還元・応用してゆくことは遺伝診療科の重要な役割です。
当科では、各種の新しい遺伝学的検査を診断に応用しています。遺伝子診断は、実施機関と連携して行います。最近になって多くの疾患で遺伝子診断が保険収載されてきましたが、場合によっては実費費用がかかる場合があります。臨床診断だけで診断が確実な場合は遺伝子診断が必要でない場合もあります。
マイクロアレイ染色体検査は通常の染色体検査(G分染法)よりもはるかに染色体異常の検出率が高いです。現在、保険診療で実施可能です。通常の染色体検査(G分染法)で異常がみつからない場合でも、この検査で診断に至る例が多数存在します。正確な診断により、その疾患が将来どのような経過をたどるかを推測できたり、予想される合併症が早期に把握できる場合があります。後述するように、次世代シーケンサーを用いた網羅的な遺伝子解析も行っています。
疾病だけでなく、薬物代謝の個人差や副作用のリスクも遺伝子の個人差(多型)が関係することがわかっています。
各診療科で染色体検査や遺伝子診断をうける場合、検査の内容・意義について詳細に説明します。単に遺伝について不安や疑問をお持ちの方も遺伝カウンセリングをうけていただくことも可能です。先天性代謝異常症の一部(ムコ多糖症やファブリー病など)では酵素補充療法が有効な治療です。当科では酵素補充療法を実施しています。

診療実績

年間初診患者数は600名前後、のべ再診患者数は6000名前後で推移しています。上記のような例えば、ダウン症候群の新患は毎年30-40名で、現在1000名以上のダウン症候群の患者さんをフォローしています。世界で数例程度の希少な疾患でも正確に診断し、可能な限りの情報提供を行っています。大学病院や他の小児専門病院からの紹介も多数うけています。
通常の診療だけでなく、遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングも多数実施しています。遺伝カウンセリング件数は年間1000件以上あり、国内では最も多くカウンセリングを実施している医療機関の一つです。遺伝カウンセリングとは遺伝や染色体、遺伝子についての問題や不安をかかえている方(クライエント)に対して、先天性疾患・遺伝性疾患について医学的・科学的にわかりやすく正確に説明し、医学的処置や検査の理解を支援し、必要な遺伝サービスや社会資源の利用ができるように援助します。遺伝に関して正確な情報をお伝えします。また、生涯変化せず、血縁者にも影響を与える可能性のある遺伝情報(遺伝子情報)をどのように受入れたらよいのかについての心理社会的支援を行います。専門資格をもった遺伝カウンセラーが複数名勤務していますので、ご希望の方は申し出てください。

IRUD:Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases
「希少・未診断疾患イニシアチブ」について

遺伝診療科ではさまざまな研究も行っています。IRUDは、原因や診断がわからない小児の患者さんについて、次世代シーケンサーを駆使してDNA(ディーエヌエー)を調べ、原因や診断の手がかりを探す全国規模の研究プロジェクトです。国立成育医療研究センター、慶應義塾大学病院などが解析拠点となり、各地の地域拠点施設(クリニカルセンター)を中心に、全国体制で病気の特定につとめます。大阪母子医療センター遺伝診療科もクリニカルセンターに指定されています。20年以上様々な検査をしても原因不明だった方も診断名がついた方もいます。新しく小児慢性特定疾患に指定されたり、治療薬がみつかった方もいます。受診希望者は通常の初診の手続きで予約してください。
小児希少・未診断疾患イニシアチブの詳細については以下HPをご覧ください。

https://plaza.umin.ac.jp/irud/

なお、各種研究に参加される際にはインフォームド・コンセントをいただいていますが、他の研究でのデータ利用や遺伝子解析を望まれない方は遺伝診療科担当医までご連絡ください。IRUD研究については、以下をご覧ください。

IRUD研究に参加している患者さんとそのご家族へ

スタッフ紹介

  • 岡本 伸彦

    主任部長・研究所長

    岡本 伸彦
    主な専攻分野 臨床遺伝学 神経遺伝学 先天異常学
    所属学会・資格など 日本人類遺伝学会評議員 日本小児遺伝学会理事など
    略歴 1984年 自治医科大学卒業
    ひとこと

    遺伝に関する質問や相談はいつでも対応します

  • 西 恵理子

    副部長

    主な専攻分野 先天異常症候群・遺伝カウンセリング(小児分野)
    所属学会・資格など 日本小児科学会専門医 臨床遺伝専門医・指導医責任医
    ひとこと

    どうぞよろしくお願いいたします。

  • 長谷川 結子

    医師

    主な専攻分野 臨床遺伝学
    所属学会・資格など 日本小児科学会専門医 臨床遺伝専門医
    略歴 2006年 大阪大学卒業
    ひとこと

    皆様の健康管理に役立つ遺伝医療を目指します