精巣は最初、胎児のおなかのなかにありますが、胎内での成長とともに陰嚢内に下降してきます。男児の多くでは出生時に精巣は陰嚢内に納まっていますが、予定より早く生まれたり、出生体重が軽かったお子さまでは、生後3か月から半年かけて下降することもあります。精巣の下降が途中で止まり、陰嚢の底まで降りてこない状態を停留精巣といいます。精巣には男性ホルモンの分泌、思春期以降の精子形成という働きがあります。停留精巣では陰嚢内に納まっている場合より周囲の温度が高いため、精巣が暖められることにより精子形成が障害され、将来男性不妊になる可能性が高くなるといわれています。このため、より環境の良い陰嚢内に精巣を固定することが勧められています。また、停留精巣は正常の精巣に比べて癌になる確率が高いと報告されており、もしも発癌した場合、陰嚢内に固定してあれば目に留まりやすく、早期発見できるという利点もあります。
全身麻酔下に精巣の位置・性状を再度確認し手術を行います。停留精巣側の下腹部のしわに沿い、約2~3cmの皮膚切開をおきます。精巣、精索(精巣につながっている血管と将来精子の通り道になる精管などの束)周囲の余計なつっぱりを丁寧にはずします。鞘状突起という鼠径ヘルニアの原因となる腹膜の一部も剥がして精巣を陰嚢まで緊張なく降ろせるようにします。陰嚢に1cm程度の切開をおき、精巣を陰嚢内に固定します。抜糸は不要です。
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