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停留精巣

精巣は最初、胎児のおなかのなかにありますが、胎内での成長とともに陰嚢内に下降してきます。男児の多くでは出生時に精巣は陰嚢内に納まっていますが、予定より早く生まれたり、出生体重が軽かったお子さまでは、生後3か月から半年かけて下降することもあります。精巣の下降が途中で止まり、陰嚢の底まで降りてこない状態を停留精巣といいます。精巣には男性ホルモンの分泌、思春期以降の精子形成という働きがあります。停留精巣では陰嚢内に納まっている場合より周囲の温度が高いため、精巣が暖められることにより精子形成が障害され、将来男性不妊になる可能性が高くなるといわれています。このため、より環境の良い陰嚢内に精巣を固定することが勧められています。また、停留精巣は正常の精巣に比べて癌になる確率が高いと報告されており、もしも発癌した場合、陰嚢内に固定してあれば目に留まりやすく、早期発見できるという利点もあります。

1. 当科が推奨する術式:精巣固定術

全身麻酔下に精巣の位置・性状を再度確認し手術を行います。停留精巣側の下腹部のしわに沿い、約2~3cmの皮膚切開をおきます。精巣、精索(精巣につながっている血管と将来精子の通り道になる精管などの束)周囲の余計なつっぱりを丁寧にはずします。鞘状突起という鼠径ヘルニアの原因となる腹膜の一部も剥がして精巣を陰嚢まで緊張なく降ろせるようにします。陰嚢に1cm程度の切開をおき、精巣を陰嚢内に固定します。抜糸は不要です。

2. 手術の危険性、合併症について、及びその対応

  1. 出血・感染
    すべての開放手術に起こりうる合併症ですが、実際に問題となるようなことは稀です。通常ごく少量の出血で済みます。感染防止のため、術後短期間は抗生物質を内服します。また陰嚢創が便に汚染した際は消毒をしていただきます。
  2. 精巣再挙上
    術後しばらく経過した後に、陰嚢に下ろした精巣が挙がってしまうことが稀にあります。外来での診察に加え、ご家族に時折触って確認していただきます。
  3. 精巣萎縮
    手術の際に精巣付近の血管に操作を加える必要があります。
    このため術後に精巣への血流が不足し、結果的に精巣の成長が小さく終わることがあります。
  4. 精管損傷
    手術中に精管に傷をつける可能性がありますが、非常に稀です。
    また手術合併症ではありませんが、停留精巣には精管の先天異常を伴う場合が少なくありません。