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多指症について

母指多指症は生まれつき親指がふたつある状態を指します。
母指がお母さんの胎内で形成されてゆく過程で何らかの問題が生じたために本来ひとつになるべき組織がふたつになったと理解してください。したがって、どちらの母指をみても反対側と比較すると小さいはずです。他の指にも多指症はありますが、日本人には母指の多指症が最もよく見られます。
したがって、これ以降では母指多指症を例に説明をします。

通常、ふたつの母指には大小があります。ほとんどの場合、外側の母指が小さくて、内側の母指が大きいです。形だけでなく、母指の動きにも違いがあるはずです。やはり,大きく発達している方がよく動いていると思います。ふたつの母指をべつべつに動かすことは困難で、動きの悪い方の母指は良い方に従って動いているだけか、ほとんど動かないことが多いです。

治療の目的はできるだけ正常に近い母指を作ることにあります。そのためには単純に余っていると思われる方の母指を切除するだけではいけません。その理由は先に述べた点に由来します。すなわち、本来ひとつになるべき組織がふたつになったことが原因です。そのために筋肉や腱・神経血管などがすべてふたつになっているとは限りません。ある筋肉は外側の母指に、別の筋肉は内側の母指に付いているといったことが当たり前のように起こっています。したがって、手術では切除する側の母指に付いている大切な筋肉や腱などを残す母指の適切な場所に移動させることが非常に大切になってきます。

このように母指多指症の手術は単純に余っているものを取り除く手術ではなく、母指を再建する手術です。経験の浅い医師により初回手術を受けると、たとえ見かけの良い母指ができたとしても再建を適切に行っていないために、機能的に不十分であったり、再変形を来したりします。移し損ねた組織を二度と取り戻すことはできませんので、初回手術は非常に大切な手術となります。

複雑な操作を術中に行うため、手術時期をあせってはなりません。小さすぎる母指に対しての手術は思い通りに行かない可能性があります。具体的には年齢にして1歳がめやすです。すくすく育って大きな赤ちゃんではもっと早くてもかまいませんし、手術が比較的単純ですむ場合には6か月で行うこともあります。逆に複雑な手術が予想される多指症では2歳近くまで待って手術をする場合もあります。結局はケースバイケースです。

(文責 : 川端 秀彦)