一昔前までは腎炎・ネフローゼ症候群に対する有効な治療法は少なく、安静・食事療法に頼らざるを得ませんでした。近年になり、これらの病気の原因や、病気が進展するメカニズムなどが次第に明らかとなり、安静・食事療法に対する考え方も変わってきました。
急性腎炎やネフローゼ症候群で尿量が少なく、浮腫のある時期には安静を保つことにより尿量が増加し、浮腫も軽減すると考えられます。しかし、この時期を過ぎれば、安静を保つ必要はありません。小児に多いネフローゼでも、学校の体育に参加することで再発することはありません。しかし長時間、強い運動を毎日続ける運動部での活動などが、腎炎に与える影響はよくわかっていません。個々の患者さんについて考える必要があるので、主治医の先生とよくご相談ください。
浮腫(むくみ)や高血圧のある時期、ステロイドを大量に服用している時期を除いて塩分制限や水分制限は不要です。
水分・塩分制限は、原則として浮腫(むくみ)や高血圧のある時期を除いて不要です。
小児に多い先天性腎尿路異常による腎不全では、尿量が多い期間が長く続きます。また、体が必要な塩分も体にとどめておく機能が弱いため、不必要な塩分制限や水分制限を行うと脱水となりやすく、その結果、腎機能が悪化する危険性があるので注意が必要です。
腎機能保護を目的とした蛋白制限は、小児では有効であるという証拠がなく、また蛋白は小児の成長に必要なため、通常蛋白制限は行っていません。蛋白の過剰摂取は腎機能が悪化する速度を早めると思われます。また、腎不全ではリン制限(腎不全ではリンが体に溜まり、動脈硬化や骨が脆くなる原因となります)が必要ですが、蛋白質にはリンが多く含まれているので、リン制限の意味から、蛋白の過剰摂取を避ける必要があります。自己流の食事療法はカロリー不足や蛋白の過剰制限となり、危険です。医師だけでなく管理栄養士の指導を受けてください。
運動すると腎臓に流れる血液量が少なくなるため、腎不全では一律に運動制限が行われてきました。しかし近年になり、有酸素運動は腎臓病に伴う心血管系合併症を減らすことから、勧められている方向にあります。当科では高血圧や溢れのない腎不全の患者さんには、他の子ども達と同様に学校の体育授業に参加してもらっています。また、過度に運動を制限することにより、自発性や将来の自立が妨げられる可能性があります。運動制限を行う場合は、腎機能だけでなく、子どもの成長全体に関係する問題として考える必要があります。
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