従来の造血幹細胞移植(以下略;移植)では、移植後の月経再開や妊娠はまれとなります。移植の1週間ほど前には強力な抗がん剤の投与(骨髄破壊的前処置;MAC)が必要なのですが、その薬剤治療は卵巣にとって過酷なのです。当科では新しいお薬であるフルダラビンを併用し、抗がん剤の総投与量が少ない強度減弱前処置(RIC)を積極的に用いています。RICでは、卵巣機能の温存が図れます。MACからRICに切り替え、例えば月経回復率は20%から80%に改善しています [1,2]。
今回、当科にてRICで移植した2人の女性(思春期・若年成人期;AYA世代)が、のちに自然妊娠から出産することができましたので、医学論文として世界に情報発信しました [3]。2人は慢性活動性EBV病という、白血病に類似の病気でした。2人とも20歳台で弟妹から末梢血幹細胞移植し、病気を克服しました(表1)。どちらも遠方にお住まいのため、移植後に安定してからは他の病院に通院していました。そして30歳台で自然妊娠しました。2人とも元の病気が影響して心臓が弱く、妊娠中は循環器内科医のサポートが必要でした。当センターでも、元の病気や、その治療が影響したことによる合併症を見守るため、長期フォローアップ外来も開設しています。
番号 | 発症年齢 | 移植年齢 | 妊娠年齢 | 在胎週数 | 出生体重 |
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1 | 25歳 | 26歳 | 34歳 | 36週 | 2000g台 |
2 | 17歳 | 21歳 | 31歳 | 31週 | 1000g台 |
小児医療部門
(内科系)
中央診療部門