急性白血病など血液がんの治療では、造血幹細胞移植(以下略:移植)が行われることがあります。移植は化学療法で治しきれない場合の強力な治療手段ですが、移植後には無月経が高頻度に認められます。移植の1週間ほど前に強力な抗がん剤などの投与(骨髄破壊的前処置;MAC)が必要なのですが、前処置は卵巣組織にも影響するからです。当センターでは2001年以降、お薬フルダラビンを併用し、抗がん剤の総投与量が少ない強度減弱前処置(RIC)を積極的に導入するようになりました。MACに比べ、RICでは移植後に発症しうる晩期合併症の発生が低く抑えられることが分かってきました。無月経もそのような晩期合併症のひとつです。
当センターでの実績として、女児ないしAYA世代(思春期・若年成人期)の女性に移植した場合、月経の発来ないし回復は、MACで移植した後で約20%(9〜27%)ですが、RIC後では約80%(79〜86%)となっています(図1)[1-3]。移植時期にも影響を受けます。MAC後に月経は、5歳未満での移植なら80%(4/5)に認められ、5歳以上での移植なら<10%(0〜8%)でした(図2)[3]。移植後に月経を認めた場合も、早発閉経のリスクが高いとされています。RIC後では、移植を15歳未満で受けた場合なら月経は 100%に、15歳以上でも75%に認められました。RIC後でも早発閉経となる可能性はあり、長期にフォローすることで詳細が分かってくると考えています。
移植後に月経が回復した人の割合は、骨髄破壊的前処置(MAC;青色)では20%、強度減弱前処置(RIC;赤色)では8%でした。参考文献2. Figure 2Bを改変して表示しました。
図1を、年齢別に区切って示しました。カッコ内は患者母数を表しています。色と前処置の関係は同じで、青色は骨髄破壊的前処置(MAC)、赤色は強度減弱前処置(RIC)です。参考文献3. Figure 1を改変して表示しました。
小児医療部門
(内科系)
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