同種造血細胞移植後に再発した、もしくは化学療法(いわゆる抗がん剤)に対する反応が悪い、などの難治性の白血病患者さんを対象に、HLA(human leukocyte antigen: ヒト白血球抗原)半合致移植を行っています。
一般的に同種造血細胞移植(以降は「移植」と呼びます)では,ドナー(造血細胞を提供する側)とレシピエント(造血細胞を移植される側;患者さん)のHLAをなるべく一致(マッチ)させて行います。その理由の一つは、不一致(ミスマッチ)があるほど移植における最も重要な合併症の一つであるGVHD(graft versus host disease: 移植片対宿主病)のリスクが上昇するからです。GVHDとは簡潔に言うと、ドナーのリンパ球がレシピエントの身体を攻撃する病態のことです。しかし一方で、このドナーリンパ球の攻撃はレシピエントの体内に存在する白血病細胞にも向かうとされています。これはレシピエントにとっては有益な反応であり、GVL(graft versus leukemia: 移植片対白血病)効果と呼ばれます。
移植前に投与する抗がん剤や放射線を移植前処置と言いますが、難治性白血病に対する移植では、抗がん剤を強化するなど、この移植前処置を強化させることが一般的です。しかし当科では移植前処置を強化するのではなく(当科では本移植に限らず原則、強度減弱前処置(reduced-intensity conditioning: RIC)を用いています)、GVL効果を強化することで白血病の治癒を目指す戦略を取っています。
HLA半合致移植ではHLAを敢えてミスマッチにすることでこのGVL効果を強化し、白血病の治癒を目指すものです。具体的には、多くの場合は患者さんのご両親(場合によっては兄弟姉妹)をドナーとして移植を行います。確かに前述のようにHLAのミスマッチが多くなることでGVHDの発症リスクは上昇しますが、ドナーリンパ球の攻撃を抑える薬剤(これを免疫抑制剤と呼びます)を追加することでコントロールが可能であり、GVHDによる死亡リスクは上昇していません。観察期間もまだ短いですが、移植後3年の時点で再発なく生存しておられる患者さんは3割強です(図1)[1]。移植にプラスアルファの治療を加える工夫を検討中であり、さらなる成績の向上を目指しています。
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