子どもの白血病は急性リンパ性白血病(ALL)および急性骨髄性白血病(AML)でほとんどを占めます。これら急性白血病に対する治療は、抗がん剤を用いる「化学療法」です。化学療法が奏効し、白血病細胞を充分に減らすことができた状態を「寛解」といいます。そしてさらに化学療法を重ね、白血病細胞の根絶を目指します。しかし白血病細胞が再び増えてくることがあり、これが「再発」です。治しきれないと判断される(再発が予想される)場合、あるいは再発してしまった場合には造血細胞移植が適応となります。
従来、診断時の白血球数や白血病細胞の特徴などによって治療方針(化学療法の強度や移植の必要性)を決定し、やり遂げる方法が一般的でした。しかし近年、寛解の深さを判断することで、治療開始後にさらに治療を強化したり、造血細胞移植の適応を考慮したりできるようになりました。すなわち治療を開始して寛解状態になっても、体内に白血病細胞がわずかに残存していることが知られており、残るすべてが治療終了までに消失しないことには治療が成功した(治癒した)とは言えません。この残存する白血病細胞(微小残存病変,MRD: minimal residual disease)を検出する感度が、近年の技術進歩でおよそ100倍に向上しました。そして治療中の適切なタイミングでこのMRDを測定し、患者さんにとってのより適切な治療方針の選択(tailored therapy)の参考としています。
この微小残存病変(MRD)は、白血病細胞に特異的に発現する細胞表面マーカーを検出するフローサイトメトリーや、白血病細胞に特異的な遺伝子マーカーを検出するPCR法(微量な遺伝子を増幅して検出する方法)により測定することができます。ただ一部の白血病で特異的なマーカーのない場合もあり、すべての患者さんでMRDを測定して治療選択の参考にできるわけではありません(この場合の治療選択は従来の方法にのっとります)。当科では1990年台にMRDの基礎研究を行い、2000年前後からは治療方針の選択に組み入れています。そして現在の無再発生存率は、急性リンパ性白血病で約90%、急性骨髄性白血病で約80%となっています。
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